院長コラム No13 医学部附属病院の歯科口腔外科
医学部の附属病院や総合病院から時々診療科案内などが送られてきます。 患者さんを紹介してもらうことが目的なのでしょう。ある医科大学の附属病院の歯科口腔外科の診療内容には、次のように書いてありました。
「口腔外科疾患が対象で、特に口腔悪性腫瘍は、手術、化学療法、放射線治療、まで行っております。最近では分子標的薬の投与、動注化学放射線治療や、他施設との連携で、粒子線治療も行っております。-以下略―」
歯科口腔外科を担当しているのは、歯科医師で医師ではありません。 確かに、日本の法律では歯科医師の資格があれば、口腔悪性腫瘍の放射線治療を行っても違法ではありません。
しかし、癌が顎口腔領域だけでなく、全身に転移してしまったら歯科医師はもうお手上げです。
医師の中には頭頸部の悪性腫瘍を専門に扱っている方がいますから、そのような方に治療してもらったほうが、適切ではないかと私は考えています。
また、この歯科口腔外科では紹介時のお願いに「う蝕や歯周病などの歯科治療は他施設に受診いただいております」と書いてあります。
歯科診療というのはう蝕や歯周病だけではありません。この病院の歯科口腔外科が対象疾患にしている埋伏歯の抜歯や唾石症や舌痛症の治療は歯科治療ではないというのでしょうか。
歯科治療ではなく口腔外科の治療だと言いたいのでしょうが、口腔外科は歯科治療の中の一部と考えるのが一般的です。
歯科治療はやらないと言う一方で、この歯科口腔外科ではインプラントも入れているようです。 インプラントを入れるというのは、典型的な歯科治療と言われているものです。
実際は病気を治しているわけではないので、治療ではないのですが、俗にインプラント治療などと言われています。
インプラントを口腔内に入れるためには外科的な知識だけではなく、インプラント周囲炎についての知識、上部構造(インプラントの上にかぶせる物)を作るための噛み合わせの知識等歯科治療の知識がいろいろと必要なはずです。
この病院の歯科口腔外科の先生たちはそれらの知識をすべて持っているのでしょうか。
そうなると口腔外科の専門医という人たちは何をやっている人たちなのでしょうか。本当に専門医なのでしょうか。
患者さんの中には、医学部の歯科口腔外科や総合病院の歯科口腔外科だから医師だと思っている方が、少なからずいるようです。また彼らも自分たちを医師の一種と考えているようですが、歯学部を出た歯科医師であるということを忘れないようにしてください。
2022年08月31日 12:32