佐倉歯科口腔クリニック|むし歯・歯周病|さいたま市大宮区

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院長コラム No22 歯のホワイトニングは医療ではない



 先日駅の近くのデパートに久しぶりに行ったところ、ホワイトニングの看板が出ていました。 新しい歯科医院でもできたのかと思ったら違いました。
 このホワイトニングというのはセルフホワイトニングと言って、歯科医師や歯科衛生士が施術するのではなく、自分で薬を塗ったり光を当てたりするようです。
 
 日本の法律では医師・歯科医師あるいは歯科衛生士以外が口の中を触れるのは違法となります。 従って医療機関以外では歯に施術することができないためセルフホワイトニングではお客さんが自分で施術するシステムとなっているが故にそのような呼び名となっているようです。
 セルフホワイトニング施術の流れは次のようです。
 1.スタッフから施術の説明を受けます
 2.歯を磨きます(電動歯ブラシを使うところもある)
 3.口の開口器を自分で装着します
 4.鏡を見ながら歯にジェルを塗ります
 5.自分でライトを当てます
 6.開口器をはずして口をすすぎます
 
 歯科医院でおこなうホワイトニングでは医薬品である高濃度過酸化水素などの漂泊剤などを使用していますが、セルフホワイトニングでは医薬品を使用できないためポリリン酸やメタリン酸または重曹など市販されているものを使用しています。
 これらは基本的に表面の汚れを取るための洗剤ですので歯科医院で行うようなホワイトニングのような漂泊効果はありません。
 セルフホワイトニングの効果は歯の表面の汚れをある程度は落とすことはできるので何となく白くなったと感じることはできるようです。
 効果が弱いのに希望する人が多いのは、料金が安いというのが理由のようです。
 
 また、最近はリップエステと言って唇専門のエステもあるようです。
 リップエステはマッサージやクリームを使った保湿などで、張りのある唇にするという施術です。
 セルフホワイトニングもリップエステも特に資格のない人が行ってもまったく問題ありません。
 その一方で歯科医師や歯科衛生士が行うホワイトニングやリップエステを売りにしている歯科医院もたくさんあります。
 そのような歯科医院の歯科医師は、資格がある歯科医療のプロが行うホワイトニングやリップエステは違うものだと言うかもしれません。
 
 しかし、私から見ればどちらも医療行為ではないことに変わりはありません。 歯科医院というのは何をするところでしょうか。病気を治すところではないですか。
 
 ホワイトニングやリップエステは病気の治療ですか。誰が考えても病気の治療ではありません。
 最近の歯科医師が行っていることは、益々医療行為から乖離する傾向があると感じているのは私だけでしょうか。
 
2023年08月10日 11:47

院長コラム No21 保険医の申請とマイナンバーカード

マイナンバーカードの健康保険証利用がいろいろと話題になっています。
今、日本ではすべての国民が公的医療保険に加入することになっており、これを国民皆保険制度といいます。
ところが、昭和31年の時点では健康保険に加入していない人が約3000万人もいました。
 
 そこで国は昭和33年に新しい「国民健康保険法(新国保法)」を成立させて、すべての市町村に公営の国民健康保険(国保)を設立させ、被用者保険に加入している会社員や公務員、その家族以外の人はすべて国保に加入することを義務づけることで、昭和36年までに、すべての国民がなんらかの健康保険に加入する「国民皆保険制度」を完成させました。
 次に健康保険の二重指定制度についてですが、この制度が出てきた背景は、医療機関が保険診療をする場合には、従来か ら保険医の指定を受けることが必要とされ、不正な診療をする保険医について、行政は保険医の指定を取り消すことができました。
ところが、不正な診療行為をする医療機関が、保険医の指定を取り消されても、別の保険医を連れてきてまた同じような診療をさせるということができてしまいます。

 そこで,厚生省は,保険診療を行う際に、保険医療機関と保険医の両方の指定 が必要であるという制度改正を行うことにより、 濃厚診療や水増し診療をする医療機関については、保険医の指定だけでなく、保険医療機関の指定取り消しを行うことにより対応しようとしたわけです。
保険医の申請は任意ですが、国民皆保険制度と保険医、保険医療機関の二重指定の制度ができたことで、医師や歯科医師は診療をする際に原則保険医でないと患者を診ることができなくなりました。
 
今考えれば医師の職業の自由や裁量権がなくなってしまう制度ですが、当時は患者だけでなく治療費を回収する手間が省けて確実に診療報酬が入ってくる医師側にも大きなメリットがあり、また、昭和40年代は診療報酬も毎年二桁アップしていたようで、この国民皆保険制度を批判する医師や歯科医師はごく一部の医師を除いていなかったようです。
ちなみに2022年の診療報酬の改定では0.29%しかアップしていません。

今、政府はマイナンバーカードと母子健康手帳、ハローワークでの求職受付、図書館カードや国立大の出欠管理まで一体化させようとしているようです。
どんどん外堀を埋めておいて、でもマイナンバーカードの申請は任意ですと素知らぬ顔をしています。
これは国民皆保険制度を作った一方で医師、歯科医師の保険医の申請は任意というシステムとよく似ています。
 
 
2023年06月30日 17:46

【院長コラム】 No.20 Cure(キュア)とCare(ケア)

 
 歯科医師会から送られてくる冊子や商業雑誌に「歯周病ケア」とか「口腔ケア」という言葉がよく見受けられます。
先日はラジオである歯科医師が歯周病は全身疾患と関係があるから、歯周病の口腔ケアが重要ですと話していました。
 このCare(ケア)といい言葉はCure(キュア)という言葉と対比して使われることが多いようです。 Cure(キュア)はCare(ケア)は本来どのような意味を持っているのでしょうか。少し調べてみました。
 長野県看護大学の江藤氏は careとcureの意味の変遷と関連を史的言語学の立場から研究しています。
 その結果,動作動詞としてのcureに対 し,状態を表す動詞であるcareについて,サービスを提供する行為や技術も重要であるが,「気持ちが向いている」という心の状態がこの語の本質的な意味であるという結論を得たとしています。
  最近、「医学が進歩し、長寿社会になった今、cureよりcareが大切になった」ということがよくいわれるようになりました。
 「care」の意味を辞書で引いてみると、動詞の項には次のように記されています。  ①気づかう、心配する、留意する、顧慮する。②(通例、否定構文で)気にする、かまう。③世話をする、めんどうをみる。④好く、愛する、望む。⑤~したがる、~したいと思う。  
  このように、ケアとは病気や障害を「治療する、癒す」(キュア)というよりは、「愛をもって気づかい、心をこめて世話をする」ということであり、本来その範囲は広いようです。
  日本語でいう看護、介護、介助、リハビリテーション、ある種の医療行為等の全てをその内容に含みます。「地域ケア」「在宅ケア」などという時の使い方がそれです。
「ある種の医療行為」とは、「リウマチケア」「ターミナルケア」「糖尿病ケア」などのごとく、慢性期や終末期の疾患で「よくはならないが、症状を緩和したり、悪くならないようにする」ための医療行為を指します。
  このようにケア(Care)という言葉には治療する、治すという意味ではなく症状を和らげたり、悪くならないようにするという意味が強いようです。
そう考えますと「歯周病のケア」といい言葉はおかしいのではないでしょうか。
 歯周病は治すことができる病気です。
 
 
2023年05月31日 18:14

院長コラム No.19 歯科医院の待合室

診療所に送られてくるダイレクトメールや雑誌には歯科医院の待合室について、書かれた記事が少なくありません。
歯科医師が増えて患者さんが減少している歯科界において、待合室のイメージを変えて患者に来てもらおうということなのでしょう。 しかし、それらの記事には医療機関としておかしな発言が多数見受けられます。
 ある歯科医師は「従来の歯医者では怖い、痛い、暗いといったマイナスイメージが先行して入りづらいのが本音です。しかし、当院のコンセプトは美容室やカフェなどのように、気軽にきてもらう空間です。」と話しています。
 また、ある女性歯科医師は歯科材料の会社が出している雑誌で、歯科の診療所について「スポーツクラブや美容院に行くような感覚で、通うのが楽しくなるような場所」と述べています。
  歯科医師だけではありません。歯科医院のリフォームをしている設計事務所からのダイレクトメールには「自分は病気だという固定概念を払うには発想も自由でなければなりません。コンシェルジュの発想で患者さまに応接。待っていても快適なJALのさくらラウンジを応用。もし、京都の旅館がクリニックだったら病の早期発見に貢献できるという発想。」などという文章がたくさん並んでいました。
 これらの方は歯科医療を本当に理解しているのでしょうか。  とても歯科医師の仕事を医療と考えている発言ではありません。
  例えば、外科に行く患者さんは怖いからとか、痛いからという理由で受診するのを控えますか。医療機関に行けば辛い検査や苦痛の伴う治療がたくさんあるのではないですか。 手術を受けるのは怖いし、手術後は痛いのではないですか。
 外科の先生がそれらのイメージを変えるためにカフェのような病院や待合室を作ろうとするでしょうか。
「通うのが楽しくなる」にいたっては、医師が聞いたらおそらく信じられないと言うでしょう。
  リフォームの会社のコンセプトも医療機関のものとは考えられません。おそらく外科や内科や一般の医療機関をリフォームする際にはこのような発想は出てこないでしょう。
 結局、ほとんどの歯科医師は歯科医療とは何かを理解していません。 歯科の医師と一般の人には思われている歯科医師自身が理解していないのですから、患者さんが歯科治療に対して間違った理解をしていても仕方ないことかもしれません。 その結果、カフェや美容室のような待合室のある診療所に、見た目だけにひかれて行ってしまうのでしょうか。
 
待合室に入ってカフェやホテルのロビーや美容室のような雰囲気を感じるような歯科医院には絶対行かないことです。

 
 
2023年03月31日 16:08

院長コラム No.18 レジン充填よりインレー修復を

むし歯の治療の最後には何らかの詰め物をすることになります。
 この詰め物、最近メディアで悪者になっているのが、「銀歯」です。 正式には保険適応の「12%金銀パラジウム合金のインレー」と言います。
 ある医療ジャーナリストよれば、「銀歯」は、時代遅れの治療法だと言います。
先日もある週刊誌に、奥歯にもインレーよりレジン充填を勧めるという記事が掲載されていました。
 その理由は 「銀歯治療は、小さな虫歯でも、健康な部分まで大きく削って広げていました。また、長期間経過すると、銀歯と天然の歯の間に隙間が空いて、虫歯の再発が起きやすい。その結果、歯の寿命が短くなってしまうのです」ということだそうです。
 
 確かに最近は『レジン修復』という合成樹脂を詰めることが主流になりつつあります。しかし、日本では"欠ける、割れやすい"といって敬遠する歯医者が、今も少なくありません。
 臨床試験で銀歯と同等の耐久性が証明されていると言われていますが、本当にそうでしょうか。
 ある大学の研究によりますと銀歯の平均寿命は8年だそうです。つまり8年くらい経つとほとんどの詰め物が何らかの理由でやり直すことになるようです。 レジン修復が同等の耐久性ということは8年くらいで再治療になるのでしょう。
 
 インレー修復による耐用年数が8年ということは私の所属する近代口腔科学研究会会員の臨床経験からすると恐ろしく低レベルの治療ということになります。
 
 全てに理想的なむし歯治療を行って、インレーで修復すれば30年でも40年でも再治療の必要ない修復処置は可能なのです。 レジン修復に20年30年の耐用年数を期待することは絶対無理です。
 
 むし歯が進行し修復処置が複雑で大きくなればなるほどレジン修復の精密さと耐用年数は落ちてくるでしょう。
 
 レジン修復は、手間がかかるのでやればやるほど、歯科医が儲からない治療だという意見もありますが、30年40年と再治療なしのインレー修復をするほうがその何倍も手間がかかるのです。
 
 病気の治療法を比較する場合、どちらの治療法も正しく行われていなければなりません。 未熟な技術で行われた治療方法を取り上げて、その治療を非難することは科学としての医学として絶対あってはならないことなのです。
 また、臨床家がある治療方法を選ぶ場合、権威主義や商業主義や経験主義に惑わされてはならないのです。
 大学病院の先生が推奨しているからとか、著明な先生が行っているからというのが権威主義です。また、自分のやってきた過去の治療と新しい治療を比べても差がないと感じたからと考えるのが経験主義です。
 
 ここに企業のダイレクトメールやPR誌による推奨も加わって、信じて使用するのが商業主義です。大学の権威とメーカーの商業主義とが結びついて臨床家に影響を与えている場合もかなり多いのです。
 
 多くの歯科医師はインレーが30年以上再治療なしと言われても信用できないかもしれません。本当の歯科医療としてのむし歯治療を理解してもらうことはとても難しいことです。  
 
2023年02月28日 12:18

院長コラム No.17 診療行為は営業ではない

新聞に西武ライオンズがベルーナドーム近くに診療所を作り、チームのスポーツドクターが一般の方の診療も行うという記事が掲載されていました。
記事の中でちょっと気になったことがあります。
診療所は月曜から土曜まで営業していますと書かれていましたが、診療所は営業行為を行っているところではありません。
歯科医院に対しては営業とかお客さんなどという方が時々いますが、新聞記者が記事の中で整形外科の診療所を営業していると書いているのにはびっくりしました。
国税庁のホームページによりますと営業の意義について次のように書いてあります。
「一般通念では、利益を得る目的で、同種の行為を継続的、反復的に行うことをいいます。営利目的がある限り、現実に利益を得ることができなかったとしても、また、当初、継続、反復の意思がある限り、1回でやめたとしても営業に該当します。
 具体的にどのような行為が営業に該当するかは、商法の規定による商人と商行為から考えられます。
 商人には、自己の名をもって商行為をすることを業とする固有の商人と、店舗その他これに類する設備(商人的施設)によって物品の販売を業とする者及び鉱業を営む者を商人とみなす擬制商人とがあります(商法第4条)。
 商行為は商法に列挙されていますが、営業とすると否とにかかわらず商行為とする絶対的商行為(商法第501条)と、営業としてしたものは商行為とする営業的商行為(商法第502条)及び商人がその営業のためにする行為を商行為とする附属的商行為(商法第503条)があります。更に、特別法による商行為として、信託の引受け、無尽業等があります。
 このことから、これらの行為をなすことを業とするものは商人となり、営利を目的として同種の行為を反復継続する場合は営業に該当することになります。
 したがって、商行為に該当しない医師、弁護士等の行為は営業にはならず、また、農業、漁業等の原始生産業者が店舗をもたずにその生産物を販売する場合も商人の概念から除かれますので営業にはなりません。
―以下省略―」
つまり医師や歯科医師の診療行為は営業行為ではなく、診療行為です。
営業行為ではないので診療所が出す領収書には印紙を貼る必要がないのです。
診療所に通院してくる方は患者さんであってお客さんではありません。
営業ということになれば、お客さんを相手に利益を追求する行為をやることになってしまいます。
しかし、法的にはそういうことになりますが、多くの歯科医院は利益を上げることだけを考えて、患者さんをお客さんと考えて営業行為をやっているというのが、実態ではないでしょうか。
利益になることはやるが、もうからないことはやらない、これはインプラントや審美歯科などをやっている歯科医院に顕著にみられる傾向があります。
儲けの対象にならないように気をつける必要があります。
 
 
2023年01月31日 15:32

院長コラム No.16 見た目ばかり気にする歯医者と患者

先日、さいたま市が実施している妊婦健診を希望した方が来院しました。
さいたま市では以前各区の保健センターで行っていた妊婦健診を数年前から、自宅近くの歯科医院で受けることができるようになりました。
この妊婦健診は歯科医師会がさいたま市から委託されている事業ですので、歯科医師会の会員でないと実施することができません。
当院を受診した妊婦さんもかかりつけの歯科医院があるのですが、そこの歯科医師が歯科医師会の会員でないため当院に来たということでした。
妊婦健診ではむし歯の有無や歯周病の状態、その他口の中に問題点がないかを診ます。
その妊婦さんの口の中にはむし歯もありましたし、歯ぐきからの出血も著明で歯周炎の疑いもある状態でした。
妊婦さんに聞くと今通院している歯科医院での治療は終わり、今は定期検診で通院しているというのです。
どのような治療をしてきたのですかと聞いたところ、歯列矯正をして、奥歯に白いかぶせ物をして、歯の根が出て見た目が気になるところは歯肉を移植して、ホワイトニングもしたというのです。
この妊婦さんの話を聞いて、今まで通院していた歯科医院の歯科医師は典型的なデンティスト(歯大工)だということが分かりました。
歯列矯正も白いかぶせ物もホワイトニングも歯の根を歯肉でカバーすることも病気の治療ではありません。見た目が良くなることはあっても病気が治るわけではありません。
見た目が良くなることと病気が治ることは全く別のことです。
結局その妊婦さんはむし歯という病気も歯周炎という病気も治療されず放置されてきたわけです。
患者さんの中には見た目を気にして来院する人も少なくありません。確かに見た目を良くすることも必要ですが、それは病気が治った後に考えることです。
医科の診療科目には形成外科という診療科があります。形成外科とは失われた機能や外貌を修復する診療科です。具体的には体表面の形態や機能の異常を治療する科です。また、「創傷の専門家」としてきず、きず跡、治らないきずをより早く、よりきれいに治す事を得意とする診療科です。
例えば乳がんで失った乳房を再建するのも形成外科の大切な治療です。
しかし、多くの歯科医師は見た目を直すことばかりに目が行き、病気を治すことに関心がないようです。審美歯科やホワイトニング、歯列矯正を診療科目の中心においている歯科医院がとても多いことは困ったことです。
今回の妊婦さんは、どうしてもかかりつけの歯科医院に通院したいというので、よく相談して見るように話しましたが、病気の治療をしてもらえるか心配です。
 
2022年12月30日 09:51

院長コラム No.15 大学病院の権威

週刊誌や月刊誌などに良い歯科医院の見分け方とか最新の歯科医療などという特集が掲載されることがあります。
良い歯科医院の基準は誰が決めているのでしょう。最新の歯科治療と言われているものは本当に患者さんのためになっているのでしょうか。
その記事を書く人がそれらを判断する一つの材料として大学病院の教授が言っているからとか、大学の歯学部長がやっているからということを基準にしているようです。
本当に大学病院というところは信用できるところなのでしょうか。
  作家で精神科医でもあるなだいなだ氏は著書「権威と権力」の中で、「昔も今も医者は特に変わっていない。変わったのは患者である。医学的な知識を持った患者も多くなってきて医者の手のうちが分かってきたから、権威も落ちた」と述べ、
 また「一部の人たちの知識の増加とマスコミの力とで、医者の権威がくずれてしまった。権威というのは、比較の問題だ。知識の落差の問題、落差の持つエネルギーの問題だ」とも述べています。
 
 確かに、昔はお医者様と崇められ、時には神様のように思われていた医師も、現在では医師というだけでは昔のような権威は無いようです。
 
 しかし、今でも大きな病院の持っている「権威」というのは、患者さんが病院を選ぶ際に、かなりの影響を与えているのではないでしょうか。
 特に東京大学医学部附属病院を頂点とする国立大学の医学部附属病院は、地域の中核病院として絶対的な権威を持っています。
歯科で言いますと国立大学としては一番歴史のある東京医科歯科大学の歯学部は日本の歯科界においてそれなりの権威を持っているようです。
 
 大学病院だから普通の民間病院とは違う高度な医療をしてもらえるだろうとか、大学病院の先生だから優秀だろうと患者さんが考えてもおかしくはありませんが、 大学病院だからといって、全ての治療で高度な医療ができるわけではありません。また、医師も優秀な先生もいれば、能力のない先生もいます。
 
 私の知人の家族がある病気で、近くの病院を受診したところ、その病気の手術ができるのは関東地方では 3つの大学病院だけと言われたそうです。
 また、以前読んだ本に、ある大学の附属病院では、自分のところで手術ができない心臓疾患の子供を他の大学に紹介しないで、抱え込んでしまっているような例もあるという話が書いてありました。 大学病院としての面子の問題なのでしょう。
 
 信じられないような話ですが、大学病院にはそういうところもあるということを念頭において、受診した方が良さそうです。

 
2022年11月30日 12:04

院長コラム No14  歯科医師の能力と良心

 先日、他院で治療中の歯が痛く、顔まで腫れてきたという患者さんが初診できました。
話を聞くと、患者さんは、歯が痛いので近くの歯科医院に行ったところ、当日は応急処置をして薬をもらい、次回の予約は2週間後と言われ、予約を取り帰りました。
 しかし、翌日になっても痛みは変わらず、2日後には顔まで腫れてきたのでその歯科医院に行ったところ、そこの歯科医師は原因の歯の処置を何かして、次回の予約は2週間後に入っていますから、その日に来て下さいと言ったそうです。
その翌日、腫れも痛みも益々ひどくなってきたため電話をしたところ、今日は混んでいて診ることはできないと断られてしまったというのです。ひどい話です。
 また、ある患者さんは右上の歯がしみるということで、近くの歯科医院に半年通院していました。半年通院しても症状が改善しないと話したところ、かみ合わせが悪いからしみるので、かみ合わせを治すためには歯列矯正が必要だ、費用は50万かかると言われたというのです。びっくりした患者さんは本当に歯列矯正が必要なのか、しみる原因は何か診て欲しいと来院しました。
レントゲンを撮ってみると、しみるという歯には歯随まで達した大きなむし歯がありました。
しみる原因は知覚過敏ではなく進行したむし歯だったのです。
 患者さんに通院中レントゲンを撮らなかったのか聞いてみたところ、一度も撮ってないというのです。しみるという歯の診断をするのにレントゲンを撮らないというのは歯科医師として信じられないことです。
レントゲンも撮らずに50万円で歯列矯正を勧めるとは歯科医師の基本的な能力を疑がってしまいます。
歯科医師の能力は患者さんにはわからないのです。
 また、先日歯ぐきが腫れて来院した患者さんは、ある歯科医院に数年通院して、その後メインテナンスということで3か月ごとにその歯科医院に通院していたと言います。レントゲンを撮ってみますと全顎に進行した歯周炎が認められました。今まで通院していた歯科医院では歯周病の話は全く聞いたことがないと言います。それどころか、ここ1年半歯科医師に口の中を見てもらったことがないというのです。歯科衛生士がメインテナンスと称して何らかの処置を続けていたようです。
 例えばリハビリで通院する機会が多い整形外科では、理学療法士がリハビリだけをする日もありますが、定期的に医師が診察して、その効果を判断していると思います。
それが医療というものです。
患者さんを定期的に来院させて1年以上医師が診察しないという病院や診療所は絶対ありません。
今回紹介した3つの歯科医院の歯科医師は医療を行う能力も良心もないようです。
患者さんがかわいそうです。
 
2022年10月02日 14:16

院長コラム No13 医学部附属病院の歯科口腔外科

 医学部の附属病院や総合病院から時々診療科案内などが送られてきます。 患者さんを紹介してもらうことが目的なのでしょう。
 ある医科大学の附属病院の歯科口腔外科の診療内容には、次のように書いてありました。
 「口腔外科疾患が対象で、特に口腔悪性腫瘍は、手術、化学療法、放射線治療、まで行っております。最近では分子標的薬の投与、動注化学放射線治療や、他施設との連携で、粒子線治療も行っております。-以下略―」
 
 歯科口腔外科を担当しているのは、歯科医師で医師ではありません。 確かに、日本の法律では歯科医師の資格があれば、口腔悪性腫瘍の放射線治療を行っても違法ではありません。
 しかし、癌が顎口腔領域だけでなく、全身に転移してしまったら歯科医師はもうお手上げです。
 
 医師の中には頭頸部の悪性腫瘍を専門に扱っている方がいますから、そのような方に治療してもらったほうが、適切ではないかと私は考えています。
 
 また、この歯科口腔外科では紹介時のお願いに「う蝕や歯周病などの歯科治療は他施設に受診いただいております」と書いてあります。
 歯科診療というのはう蝕や歯周病だけではありません。この病院の歯科口腔外科が対象疾患にしている埋伏歯の抜歯や唾石症や舌痛症の治療は歯科治療ではないというのでしょうか。
 
 歯科治療ではなく口腔外科の治療だと言いたいのでしょうが、口腔外科は歯科治療の中の一部と考えるのが一般的です。
 
 歯科治療はやらないと言う一方で、この歯科口腔外科ではインプラントも入れているようです。 インプラントを入れるというのは、典型的な歯科治療と言われているものです。
 
 実際は病気を治しているわけではないので、治療ではないのですが、俗にインプラント治療などと言われています。
 
 インプラントを口腔内に入れるためには外科的な知識だけではなく、インプラント周囲炎についての知識、上部構造(インプラントの上にかぶせる物)を作るための噛み合わせの知識等歯科治療の知識がいろいろと必要なはずです。
 この病院の歯科口腔外科の先生たちはそれらの知識をすべて持っているのでしょうか。
 
 そうなると口腔外科の専門医という人たちは何をやっている人たちなのでしょうか。本当に専門医なのでしょうか。
 
 患者さんの中には、医学部の歯科口腔外科や総合病院の歯科口腔外科だから医師だと思っている方が、少なからずいるようです。また彼らも自分たちを医師の一種と考えているようですが、歯学部を出た歯科医師であるということを忘れないようにしてください。
 
2022年08月31日 12:32