佐倉歯科口腔クリニック|むし歯・歯周病|さいたま市大宮区

誤解と間違いがあふれる歯科治療の現実からあなたの歯を守りたい。歯科治療の真実を知ってもらうことが佐倉歯科口腔クリニックの願いです。

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院長コラム No33 週間現代の記事を読んで

 週刊現代に「危険な歯医者、儲けのからくりとその見抜き方」という記事が掲載されていました。
記事の冒頭で「あらゆる医者のなかで、歯科医の技量がもっともピンキリと言っていい。悪徳歯科医のカモにされないために、その特徴を覚えておこう」と書かれています。
 皆さんは歯科医師が本当に医療行為を行っている医者と考えていますか。おそらくほとんどの人が歯科医師は医者というより、歯の大工さんと考えたほうが感覚的にぴったりするのではないでしょうか。
 歯を削る、埋める、歯を殺す、かぶせる、歯を針金を使って動かす、骨を削って金属の棒を立てる、歯を白くする。これらの行為はデンティストリーと言って法的には歯科医療行為ですが医療行為ではありません。
 あらゆる医者の中でと医師も歯科医師もひとくくりに考えているようですが、皆さんは何故医師の教育は医学部、歯科医師の教育は歯学部と別れているのか知っていますか。
 この質問に対して正しく答えらえる歯科医師や医師はほとんどいないと思います。
答えを詳しく書くことは省きますが、歯科医師は元々歯大工がルーツですから、「あらゆる医者」とひとくくりにしたら医師が怒ってしまいます。
その歯大工の典型的な人物がこの記事で取材を受けているインプラントが得意だと盛んに宣伝しているK歯科医師です。
 K氏は記事の中で「情報弱者をターゲットにして荒稼ぎをしている歯科医師が年々増えています。こういう悪質歯科は何も知らない人の弱みにつけこんで、十分な治療もしないで、経営のためなら患者は二の次のクリニックが急増していると感じます」述べています。
K氏は自分はこのような歯科医師ではないという前提で話をしているのでしょう。しかし、インプラントばかりやっているK氏こそが悪徳歯科ではないのでしょうか
K氏の言い分は自分は歯がない人に十分に説明して納得してもらった上で、インプラントを入れているというでしょう。
確かにK氏のところへ来るお客さん(あえて患者ではなく)は歯がない人かもしれませんが、どうして歯が無くなってしまったのでしょうか。むし歯や歯周病が進行してこじれて歯科医院で抜いたのではありませんか。
歯があればインプラントを入れる場所はありません。
 インプラントは欠損補綴の一つかもしれませんが、治療ではありません。治療というのは病気を治すことです。K氏が患者のために経営も考えず十分な治療をして病気を治しているというなら、私も批判はしません。
しかし、K氏の診療所の信じられないようなインプラントの埋入本数と、あの看板から推測しますと、K氏の診療所が病気の治療をしているとは考えられません。
 私が師事しています飯塚哲夫氏はよく次のようなことを言います「医師は病気を治すのが仕事、葬儀屋は死んだ人の葬儀をするのが仕事。どちらも必要な仕事だが医者が葬儀屋をやることはない」
 K氏は自分が歯を抜いたのではない、他の歯医者に抜かれて困っている人が来るのだと言うかもしれません。
そのような言い訳は歯科医師としてどうでしょうか
 K氏のような歯科医師が増えれば増えるほど歯科医師の社会的評価は低くなることはあっても高くなることはありません。
K氏の診療所にインプラントを埋入してほしいと来るお客さんがいなくなった時こそ歯科医師の評価が上る時ではないでしょうか。
 
2025年06月13日 17:48

院長コラム No32 駅前で開業した歯科医院のチラシを見て

 大宮駅の西口には新しいビルが次々と建てられています
その新しいビルにテナントとして歯科医院が入ることが珍しくありません
大宮駅西口の新しいビルのテナント料は都内の一等地ほどではありませんが決して安くありません.

 高いテナント料を払って良く経営が成り立つなと他人事ながら心配してしまいます。
経営を成り立たせるからくりはいろいろ理由をつけて自由診療に持っていくことのようです
新聞に折り込み広告を入れてきたある歯科医院は、自由診療を勧める理由を次のように書いています。
 「保険の治療は最低限度使えるまでの治療で、隣接する歯の健康や先々のことを考慮した治療ではない」と説明し「自由診療は歯科材料や歯科医師の技術的な治療に制限がなく、再発リスクの少ない歯の将来を考慮し噛むことや話すことを重視した治療が可能」と説明しています。
 
  もっともらしい説明ですが、単刀直入に言えば保険診療で高いテナント料が払えません。
儲からないので自費診療でお金を出してくださいということだと思います。
隣接する歯の健康を考慮するということはインプラントにすれば隣接する歯を削ってブリッジにしなくて済みますよということでしょう。そこにまたからくりがあります。
歯を削るのはだめでインプラントを埋入するために骨を削るのはいいのでしょうか。
医師や看護師などの医療従事者と話をしていますとほぼ全員の方が骨を削るインプラントではなく歯を削るブリッジを選択します。
骨を削って金属の棒を入れることの医学的な問題点が分かるからでしょう
またこの歯科医院は顎関節症の治療として「嚙み合わせ治療、歯を削らない矯正治療で顎の痛みを改善」と説明していますが本当に顎関節症のことを勉強しているのでしょうか
 顎関節症という言葉自体世界的には使用されていない言葉で、「T.M.D」という言葉を使用するのが常識ですし、噛み合わせや矯正治療でT.M.Dを治すなどという非常識なことを言っている歯科医師は世界的に見てほとんどいません。
結局はすべて経営のため、自由診療しかないインプラントや歯列矯正に誘導するための詭弁でしかないのです。
駅の近くの立派なビルで開業している歯科医院にかかる場合は、それなりに注意が必要だということは覚えておいてください。
 
 
2025年05月01日 17:41

院長コラム No31  予後の意味が分からない歯科医師

病院や診療所で「予後」とう言葉を聞いたことがありますか。
予後とは辞書によると
 1 病気・手術などの経過または終末について、医学的に予測すること。
 2 病気の治癒後の経過。 と説明されています。
 
また、「予後とは、手術後の患者の状態や、病気・創傷の将来的な状態、特にそれらの状態に関する見込み、を意味する医学用語である」 とか「予後という言葉は疾病のその後の経過の予測として使うものである」という解説もあります。
 
しかし、この「予後」という言葉が間違って使われている場合があります。
例えば、「腹腔鏡手術の予後」とか「AEDを使用した場合の予後」などというのは明らかに誤った使い方です。
「腹腔鏡手術を行った○○癌の予後」、「AEDを使用した心臓震盪の予後」というのが正しい使い方です。
 
内科や外科ではさすがに誤った使い方をしている医師は少ないようですが、歯科では誤った使い方をしている歯科医師や論文が多数見られます。
 
例えば良く見られるのは「インプラントの予後」とか「レジン充填の予後」「インレーの予後」「歯周再生療法の予後」「矯正治療後の予後」など例を挙げればきりがありません。
 インプラントやインレー、レジンは「物」で、「病気」ではありませんから予後という言葉は適切ではありません。また歯列矯正は一部を除き美容が目的ですから、これも予後という言葉を使うのは誤りです。
 
インプラントにいたっては病気を治すどころか、新しい病気を作っているのですから、「予後」という言葉が一番合わない処置なのです。
ある歯周病専門医の歯科医師は歯周病の治療について「予後の改善」とか「予後を延ばす」などをいう表現を使い論文を書いていますが、これもおかしな日本語です。
歯周病治療についても、例えば「歯周再生療法を行った重度歯周炎の予後が良好か不良か」というのが正しい表現かと思います。
 
なぜ歯科界には「予後」という言葉の誤った使用例が多いのでしょうか。
それは歯学部の教育のほとんどがデンティストリーと言われる歯の修理工や歯の美容を教育しており、病気の治療という概念が根本的に欠けているからだと、私は考えています。
病気が治るということはどういうことなのか、医師として当然のことが分からない歯科医師が多いようです。
 
歯科医師として誰でも治療できると思われている、むし歯も歯周病も本当の意味での治癒を理解している歯科医師は少ないようです。
「病気の治癒」が分からない歯科医師が「予後」という言葉を誤って使用してもおかしくはありません。
「治癒」が分からないのですから、そのような歯科医師に診てもらっても病気は治りません。
 
2025年03月01日 11:13

院長コラムNo30 インプラントの無料相談会を考える

 
新聞にインプラントの無料相談会を開催しますという折込広告が時々入ってきます。 先日もインプラントが得意だという歯科医院がチラシを入れていました。
 
 チラシのタイトルは「歯でお困りの方はご相談ください」でした。 このタイトルおかしいと思いませんか。
 
 インプラントというのは歯がないところに骨を削って金属の棒を入れる処置です。 歯で困っている患者さんが受ける処置ではなく、歯がないことにより噛むのに困っている患者さんが受ける処置です。
 
 またチラシにはインプラントを入れることは得意ですが、歯を残すことはもっと得意ですとも書いてあるのです。 インプラントは歯がない部位に入れるもの、歯があればインプラントは必要ありません。
 
 歯を残すことのほうがもっと得意だというのであれば、矛盾する文章ではありませんか。 歯で困っている患者さんに行うことはインプラントの無料相談ではなく、歯を残すことの無料相談のはずです。
 
 歯を残すことはもっと得意というのは矛盾があるだけでなく、患者さんを紛らわせる 広告で問題があると思います。
 
 この歯科医院のホームページを見ますと、インプラントの宣伝がほとんどを占めており、歯を残す治療については一般歯科としてわずかに書いてあるだけです。 歯を残すことが得意と宣伝し、結局はインプラントを入れる患者さんを集めるというのが本音なのでしょう。
 
 インプラントが大好きな歯科医師は患者さんのために病気の治療をしている人ではなく、お金儲けが好きなただのデンティスト(歯大工)でしかありません。
 
 高額な宣伝費をかけてラジオで広告を頻繁に流している歯科医院もあります。 それだけ広告宣伝費をかけてもそれ以上の利益があるのでしょう。
 
 インプラントが大好きな歯科医院から見れば来院する方は患者さんではなくお客さんでしかありません。 患者さんは病気の治療の対象ですが、お客さんは儲けの対象です。
 
 皆さんは患者さんとして診てもらいたいですか、お客さんとして対応してもらいたいですか。

 

 
 
 
2024年11月01日 09:58

院長コラム No29 PMTCの誤った考え方


 
 ウエルテックという歯磨き粉などを販売している会社から「患者さんに寄り添ったPMTC」という小冊子が送られてきました。
  最近、このPMTCとかクリーニングという言葉は患者さんの間にも浸透しており、クリーニングを主訴として来院する患者さんもいます。しかし日本ではこのPMTCという処置が間違って浸透してしまったようです。
 
 PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)はスウェーデンのAxelssonという予防歯科の先生が提唱した概念です。
 Axelssonは「PMTCは専門家による機械的プラークコントロールであり、歯面研磨のことではない。」と定義しています。  
  具体的な方法としては「電気エンジンとフッ化物配合研磨剤を用いて、歯肉縁上から縁下3㎜までのすべての歯面からプラックを取り除くことである。」としています。
  ところが、日本ではPMTCというと、様々な処置がおこなわれているようです。  歯周病の治療としての処置や、歯石除去、ステイン除去、歯のクリーニン グ、口腔内の清掃など多肢に渡り、それぞれの歯科医院の独自の判断で行われているようです。
 日本ではPMTCという言葉だけを利用し、一部の歯科医師が勝手に定義を変更して自分の考えを広めているだけと考えてください。
 患者さん自身による質の高いプラークコントロールができれば、AxelssonのいうPMTCは必要ありません。この効果のあるセルフケアというのが難しいので    す。
  歯科先進国と言われるアメリカの予防歯科の論文にもPMTCの必要性や有効性を示しているものはないようです。
 今回送られてきた小冊子で紹介しているPMTCは完全に歯面研磨(歯の表面の着色や歯石を取る)の説明になっていました。 歯の表面を磨いても一時的に歯がきれいになることはあっても、むし歯の予防や歯周病の予防効果はほとんどないことを理解してください。
  
 医療効果のある定期的な処置としては、歯周病のメインテナンスで行われるperiodontal debridementという処置があります。periodontal debridementというのは、少し専門的な話になりますが、歯の根の表面だけでなく歯周ポケットスペースや歯周組織の軟組織なども対象にプラック除去を行うことです。
  歯周炎という病気は完全に治ったとしても、油断しているとその後再発することがしばしばあります。歯周炎を再発させずに健康な状態を維持していくためには、毎日の患者さん自身によるプラックコントロールと歯科医院で受ける定期的な処置を継続していくことはとても重要なことです。
2024年07月24日 18:43

院長コラム No28 歯列矯正の時期について

 校医をしている小学校の歯科健診に行ってきました。
 
 矯正治療をしている児童が何人かいましたが、中にはなぜこの時期にこのような矯正の装置が口の中に入っているのか、全く理由が分からない児童もいました。
 矯正治療というのはいつ行ってもよいわけではなく、矯正治療に最も適した時期があります。
 それは、顎の骨の急激な成長が見られる12~15歳くらいの時期になります。  この時期が矯正治療に適している理由はいくつかあります。
 
 第1に顎の骨の成長期には、歯の移動が比較的容易にしかも急速に行なえるということです。
 第2にそれ以前の時期に歯を動かしても、その後顎の骨の急激な成長があると、それによって再び歯並びが乱れてしまう可能性があるということです。
 第3に12歳くらいになるとすべての永久歯がはえてくるので、矯正装置の装着などが容易になり、歯の移動がしやすくなるということです。
 特に上顎前突(いわゆる出歯)や下顎前突(いわゆる受け口)の治療は思春期の終わり頃に行うのが望ましいとされています。
 その理由は、顎の骨の成長がある程度進まないとその患者さんの生まれつき持っている素質としての上あごと下あごの位置関係が分からない場合があるからです。
 
 しかし、矯正治療の種類によっては本格的な矯正治療の準備的処置として思春期以前に行った方が良い場合もあります。
 たとえば、永久歯がはえてきた時に、とんでもない位置にはえてきた場合は、ある程度正しい位置に動かしておいた方が、後の本格的な矯正治療で歯を動かすことが容易になります。
 また、はえてきた永久歯の位置が悪く、見せかけの反対咬合を作っているような場合も、早期に歯の位置を変えたほうがいい場合もあります。
 そのほかにも上顎前突の症例のうちのあるものは、比較的早い時期に矯正治療を行った方がいい場合もあるようです。
 
 今回の学校健診で見うけられた児童の中には、何のために矯正装置をつけているのか全く理由が分からず、かえってプラック(歯垢)が付きやすくなっているだけで害があるように見える子もいました。
 
 歯科医院の中には矯正治療を希望する患者さんを逃がさないために、とにかく早く装置を付けてしまうところもあるようですから注意が必要です。
 
2024年05月16日 17:47

院長コラム No.27 歯列矯正を始めた藤井聡太八冠



将棋の藤井聡太八冠が歯列矯正をしているようです。藤井さんは少し前歯が出て、歯が重なっていましたから見た目を気にして矯正を始めたのでしょう。

小学校や中学校での歯科健診があると、その後疾病通知を持ってくるお子さんがいます。 その疾病通知に歯列・咬合・顎関節の状態という項目があります。

 日本学校歯科医会のマニュアルによりますと歯列・咬合・顎関節の状態は以下の基準で健診するよう書かれています

 ●重度の歯列異常
 ①叢生:隣接歯が互いの歯冠幅径の1/4以上の重なるもの
 ②正中離開:上顎中前歯間に6mm以上の間隙  (萌出が歯冠長の1/3以下は除く)
  ■上唇小帯の肥厚によるもの
  ●重度の不正咬合
 ③反対咬合:3歯以上の反対咬合
  ■1歯でも骨格性を疑う下顎前突
 ④上顎前突:オーバージェット8mm以上
 ⑤開咬:上下顎前歯切線間に垂直的に6mm以上
  ■過蓋咬合、交叉咬合なども記載する。
  ■歯数や程度に関係なく、現時点で精検が適当とおもわれるもの

 このような基準で健診をしたらかなり多くの児童、生徒が要精検になってしまいます。 本当にこの基準は必要なのでしょうか。
 矯正歯科のテキストブックのほとんどには歯列不正や不正咬合は有害であると書かれています。不正咬合や歯列不正は噛むことの障害、発音の障害、顔の筋肉の障害、心理的な障害、むし歯や歯周病などの原因になるということのようです。
 口蓋裂や口唇裂といった先天的な問題を持っていて、歯列不正も不正咬合もあるお子さんの場合は、たしかに発音障害や咬みにくいという問題がある場合もあります。 しかし、それは歯列不正があるからではなく口蓋裂などの問題が大きく影響しているからです。

 
 先天的な障害がない場合、不正咬合や歯列不正を矯正することは、むし歯や歯周病の予防にもあまり役に立たないようです。アメリカの歯周病学会は30年以上前に「不正咬合や歯列不正を正すことが歯周病を予防するという科学的根拠は欠如している」と発表しています。
また過去の数多くの論文から歯周組織の健康に及ぼす矯正治療の効果には信頼すべき科学的根拠はないと結論づけている研究もあります。
 むし歯への影響はどうでしょう。歯列不正特に叢生(乱杭歯・歯が重なったりしている)とむし歯に関する論文を調べた結果、そのような論文は極めて少ないことや科学的根拠の高い論文はないという報告もあります。

 特別な場合を除き、不正咬合や歯列不正に医学的医学的な意味がほとんどないことを考えると矯正治療というものは審美的な改善を目的として行うものと考えたほうがいいと思います。
 審美的な問題を本人や保護者が気にしていれば、学校健診で疾病通知をもらわなくても歯列矯正をするでしょうし、疾病通知をもらっても歯並びが気にならなければ矯正をする必要はないのです。

 
 反対咬合で有名なスポーツ選手には柔道でロサンゼルスオリンピック金メダルのJOC会長の山下泰裕氏や野球の松井秀喜氏、内川聖一氏などたくさんいます。彼らが子供のころ矯正をしていたらあれほどの選手にならなかったかもしれません。 歯列矯正は見た目が気になったら必要最小限やればいいのです。

 
2024年03月20日 10:05

院長コラム No26 歯周病は誰が治療するのか

日本歯周病学会によりますと日本人の35歳〜59歳の7割が歯周病になっているといいます。
 しかし、私の40年の臨床経験から、軽度の歯肉炎まで含めると15歳以上の日本人のほぼ全員が歯周病になっていると考えたほうがいいと思います。 いずれにしても国民の多くが歯周病になっていることは事実です。
そこで、日本歯周病学会は歯周病が重症化する前に早期に受診することを勧めています。 早期受診を勧めるのはいいのですが、歯科医院の選び方の基準に問題があります。
 日本歯周病学会では認定医、専門医制度を作っています。どんな病気でもその治療の際にはその病気に関する知識と経験が豊富な専門医に頼むことが安心につながります。歯周病も同じです。歯周病の治療は認定医か専門医に診てもらいましょうというのです。
 学会の言いたいことも分からないわけではありません。なぜなら、ほとんどの歯科医師が歯周病の治療をしていないというのが現状であり、患者さんはどこを受診していいのか困ってしまうからです。
 では、認定医や専門医はどの位いるのでしょうか。
埼玉県で調べてみますと、大学病院勤務の歯科医師を除くと認定医と専門医を合わせても約100人しかいません。 人口約740万の埼玉県でわずか100人です。 この人数で県民全員の歯周病を管理することは不可能です。  
 日本歯周病学会の専門医、指導医の理念には次のように書いてあります。「歯周病・歯周治療学の専門的知識と技術を有する歯科医師であるとともに、歯科医療関係者ならびに医療関係者と連携をとり、チーム医療を実践する」  
 このように、歯周病専門医は歯周病の治療を専門に行う歯科医師のはずです。ですからこの理念にあるように他の歯科医療関係者とチーム医療を実践するようにということなのでしょう。  歯科医療関係者というのは、他の歯科専門医や、若しくは一般的な開業歯科医師などを言っていると思います。  
つまりそれらの歯科医師と連携をとりチーム医療を実践してくださいという考えだと思います。  
 ところが現状はどうでしょうか。この理念通り歯周病専門医として歯科医療を行っている歯科医師は大学病院の歯科医師か、ごく一部の開業医だけになっています。 多くの歯周病専門医はごく普通の開業歯科医であり、むし歯の治療も入れ歯も歯列矯正も何でもやっている人達です。    
歯周病専門医と言っておきながら、ごく普通の歯科医院と変わらず、歯周病の治療が他より得意というだけの歯科医院でしかありません。  
 歯はむし歯か歯周病が原因でそれがこじれて、抜かれてしまうのです。 歯科医師が歯科の医師なら最低限むし歯と歯周病という病気を治す能力を持っているのが当たり前ではないですか。
 日本歯周病学会は日本の歯科医師のすべてが歯周病治療の能力を持つように努力することが、一番重要な仕事ではないでしょうか。そのうえで、一部の難症例を歯周病専門医に診てもらうのが理想と私は考えています。


 
 
2024年02月15日 16:36

【院長コラム】 No.25 歯周病を治療しない歯科医師たち

1月14日にホテルメトロポリタンエドモントで近代口腔科学研究会新年講演会が開催されました。
演題は「誰も知らない本当の歯周療法」で講師の飯塚哲夫先生に3時間半近く、最新の歯周療法についてご講演をいただきました。

歯周病が治らないまたは治せない本当の理由は簡単にまとめると次の4つになります。
(1) プラックコントロールに問題がある
 プラックコントロールを重要視していないため、多くの歯科医院で行われている刷掃指導は技術的なことだけを見ており歯周組織の健康状態とリンクしてません。          
(2) 非外科療法に問題がある
 手術などの外科的なことを行わずに歯周病を治すことを非外科療法と言います。 多くの歯科医師は歯石を悪者にして、患者さんにも歯石を取ることを勧めますが、 歯石は完全に除去する必要はありません。またスケーリングやルートプレイニングといった処置は治療効果に限界があることを認識しておく必要があります。
(3) 外科療法に問題がある
 進行した歯周病の場合は手術が必要な場合もあるのですが、日本歯周病学会が勧めている手術法には問題があります。本当の歯周外科は口腔外科と歯周療法の知識の両方を持っている歯科医師にしかできません。
(4) 定期検査と定期処置に問題がある
 日本歯科医師会は歯周病を予防するために定期検診を受けましょうと盛んに言っていますが、一般的に行われている検診と処置は歯石を取って形だけのブラッシング指導をしているだけです。 詳細は省きますが、定期検査と定期処置でやらなければならないことは多枝にわたり、単純なものではありません。

  講演会の後に考え込んでしまったのですが、歯科医師は歯周病を治す能力以前の問題として、治す気が本当にあるのでしょうか。歯周病の治す能力が高いとか低いとかの問題ではありません。 歯周病を治す気がほとんどの歯科医師にないというのが現実です。歯周病が治らなくてもほとんどの歯科医師はまったく困らないのです。
 当院に来院する患者さんの中には、進行した歯周病がありながら、一度も歯周病について話を聞いたことがないという患者さんは多数います。  
歯科医師が歯科の医師ではなく、歯の修理工、歯の大工、歯の美容師さんだと考えれば、歯周病を治す気のない歯科医師がほとんどだということも、納得できてしまうのです。
 特別な場合を除いて、歯を失う原因はむし歯がこじれたか歯周病が進行した場合がほとんどです。 むし歯と歯周病を完全に治せばインプラントは必要ありません。
 ラジオやテレビなどでインプラントを宣伝しているような歯科医院は病気を治していません。 当然歯周病だけでなく口の中の病気の治療など全く関心がない人達なのです。



 
 
2024年01月16日 10:23

【院長コラム】 No.24 歯科インプラントの広告宣伝を考える

先日ある会社から「インプラントシンポジウムを開催するので、インプラントについて話をしていただける歯科医師を募集しています」という内容のダイレクトメールが届きました。
 手紙によりますと「医療安全の市民対話シンポジウム」を開催するにあたり、インプラントに特化されている歯科医に連絡しているという内容でした。
 
 そうだとするとなぜ私の診療所にその手紙がきたのでしょうか、不思議です。なぜなら私はインプラントに特化するどころか私ほどインプラントに否定している歯科医師はいないからです。
 
 まったく治療方針が正反対の歯科医師の所にも手紙が来るくらいですから、全部の歯科医院に出しているのでしょう。 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるで、誰か引っかかって応募してくるだろうという戦略なのかもしれません。
 
 この手紙を送ってきた会社は歯科医療○○○株式会社という歯科医院向けの広告宣伝を手掛けている会社でした。
 最近は歯科医院を対象にした広告宣伝を扱う会社が増えてきているようです。日本インプラント株式会社とか日本歯列矯正株式会社などという会社もあります。これらの会社はインプラントや矯正の器具器材を売っている会社ではありません。インプラントや歯列矯正の宣伝が目的の会社なのです。
 
 しかし、○○人工股関節株式会社とか○○心臓移植株式会社などと言って広告宣伝をしている会社はおそらくないでしょう。 医療の広告宣伝を株式会社がやるということは考えられないことです。
 歯科でも○○歯周病株式会社とか○○○口腔外科株式会社などという広告会社は無いと思います。
 インプラントや歯列矯正、ホワイトニングは医療ではないのでこのような宣伝広告をする会社が存在するのです。
 
 歯科医増患者減と言われる時代です。歯科医師はいろいろな広告宣伝を考えています。ネット上のバナー広告はもちろん、先日は新聞に大きくインプラントの宣伝を載せていた歯科クリニックがありました。
 
ラジオで宣伝している歯科院もあります。またある歯科医院は治療が終了した患者さんに、自分の診療所の住所や名前が焼いてある煎餅をテストフードだと言って配っているそうです。 それをある新聞が地方版に取り上げていましたから、その歯科医院の先生としてはしてやったりでしょう。
 
いずれにしても、ここまで歯科医院が増えてきますと患者さんもどこに行っていいのか分からないので、広告に頼ってしまうのも無理はありません。
 
 しかし、本当に実力のある歯科医院はそのような広告宣伝は絶対しませんので注意してください。
 
2023年10月31日 16:56