院長コラム No33 週間現代の記事を読んで
週刊現代に「危険な歯医者、儲けのからくりとその見抜き方」という記事が掲載されていました。記事の冒頭で「あらゆる医者のなかで、歯科医の技量がもっともピンキリと言っていい。悪徳歯科医のカモにされないために、その特徴を覚えておこう」と書かれています。
皆さんは歯科医師が本当に医療行為を行っている医者と考えていますか。おそらくほとんどの人が歯科医師は医者というより、歯の大工さんと考えたほうが感覚的にぴったりするのではないでしょうか。
歯を削る、埋める、歯を殺す、かぶせる、歯を針金を使って動かす、骨を削って金属の棒を立てる、歯を白くする。これらの行為はデンティストリーと言って法的には歯科医療行為ですが医療行為ではありません。
あらゆる医者の中でと医師も歯科医師もひとくくりに考えているようですが、皆さんは何故医師の教育は医学部、歯科医師の教育は歯学部と別れているのか知っていますか。
この質問に対して正しく答えらえる歯科医師や医師はほとんどいないと思います。
答えを詳しく書くことは省きますが、歯科医師は元々歯大工がルーツですから、「あらゆる医者」とひとくくりにしたら医師が怒ってしまいます。
その歯大工の典型的な人物がこの記事で取材を受けているインプラントが得意だと盛んに宣伝しているK歯科医師です。
K氏は記事の中で「情報弱者をターゲットにして荒稼ぎをしている歯科医師が年々増えています。こういう悪質歯科は何も知らない人の弱みにつけこんで、十分な治療もしないで、経営のためなら患者は二の次のクリニックが急増していると感じます」述べています。
K氏は自分はこのような歯科医師ではないという前提で話をしているのでしょう。しかし、インプラントばかりやっているK氏こそが悪徳歯科ではないのでしょうか
K氏の言い分は自分は歯がない人に十分に説明して納得してもらった上で、インプラントを入れているというでしょう。
確かにK氏のところへ来るお客さん(あえて患者ではなく)は歯がない人かもしれませんが、どうして歯が無くなってしまったのでしょうか。むし歯や歯周病が進行してこじれて歯科医院で抜いたのではありませんか。
歯があればインプラントを入れる場所はありません。
インプラントは欠損補綴の一つかもしれませんが、治療ではありません。治療というのは病気を治すことです。K氏が患者のために経営も考えず十分な治療をして病気を治しているというなら、私も批判はしません。
しかし、K氏の診療所の信じられないようなインプラントの埋入本数と、あの看板から推測しますと、K氏の診療所が病気の治療をしているとは考えられません。
私が師事しています飯塚哲夫氏はよく次のようなことを言います「医師は病気を治すのが仕事、葬儀屋は死んだ人の葬儀をするのが仕事。どちらも必要な仕事だが医者が葬儀屋をやることはない」
K氏は自分が歯を抜いたのではない、他の歯医者に抜かれて困っている人が来るのだと言うかもしれません。
そのような言い訳は歯科医師としてどうでしょうか
K氏のような歯科医師が増えれば増えるほど歯科医師の社会的評価は低くなることはあっても高くなることはありません。
K氏の診療所にインプラントを埋入してほしいと来るお客さんがいなくなった時こそ歯科医師の評価が上る時ではないでしょうか。
2025年06月13日 17:48