佐倉歯科口腔クリニック|むし歯・歯周病|さいたま市大宮区

誤解と間違いがあふれる歯科治療の現実からあなたの歯を守りたい。歯科治療の真実を知ってもらうことが佐倉歯科口腔クリニックの願いです。

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院長コラム No29 PMTCの誤った考え方


 
 ウエルテックという歯磨き粉などを販売している会社から「患者さんに寄り添ったPMTC」という小冊子が送られてきました。
  最近、このPMTCとかクリーニングという言葉は患者さんの間にも浸透しており、クリーニングを主訴として来院する患者さんもいます。しかし日本ではこのPMTCという処置が間違って浸透してしまったようです。
 
 PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)はスウェーデンのAxelssonという予防歯科の先生が提唱した概念です。
 Axelssonは「PMTCは専門家による機械的プラークコントロールであり、歯面研磨のことではない。」と定義しています。  
  具体的な方法としては「電気エンジンとフッ化物配合研磨剤を用いて、歯肉縁上から縁下3㎜までのすべての歯面からプラックを取り除くことである。」としています。
  ところが、日本ではPMTCというと、様々な処置がおこなわれているようです。  歯周病の治療としての処置や、歯石除去、ステイン除去、歯のクリーニン グ、口腔内の清掃など多肢に渡り、それぞれの歯科医院の独自の判断で行われているようです。
 日本ではPMTCという言葉だけを利用し、一部の歯科医師が勝手に定義を変更して自分の考えを広めているだけと考えてください。
 患者さん自身による質の高いプラークコントロールができれば、AxelssonのいうPMTCは必要ありません。この効果のあるセルフケアというのが難しいので    す。
  歯科先進国と言われるアメリカの予防歯科の論文にもPMTCの必要性や有効性を示しているものはないようです。
 今回送られてきた小冊子で紹介しているPMTCは完全に歯面研磨(歯の表面の着色や歯石を取る)の説明になっていました。 歯の表面を磨いても一時的に歯がきれいになることはあっても、むし歯の予防や歯周病の予防効果はほとんどないことを理解してください。
  
 医療効果のある定期的な処置としては、歯周病のメインテナンスで行われるperiodontal debridementという処置があります。periodontal debridementというのは、少し専門的な話になりますが、歯の根の表面だけでなく歯周ポケットスペースや歯周組織の軟組織なども対象にプラック除去を行うことです。
  歯周炎という病気は完全に治ったとしても、油断しているとその後再発することがしばしばあります。歯周炎を再発させずに健康な状態を維持していくためには、毎日の患者さん自身によるプラックコントロールと歯科医院で受ける定期的な処置を継続していくことはとても重要なことです。
2024年07月24日 18:43

院長コラム No28 歯列矯正の時期について

 校医をしている小学校の歯科健診に行ってきました。
 
 矯正治療をしている児童が何人かいましたが、中にはなぜこの時期にこのような矯正の装置が口の中に入っているのか、全く理由が分からない児童もいました。
 矯正治療というのはいつ行ってもよいわけではなく、矯正治療に最も適した時期があります。
 それは、顎の骨の急激な成長が見られる12~15歳くらいの時期になります。  この時期が矯正治療に適している理由はいくつかあります。
 
 第1に顎の骨の成長期には、歯の移動が比較的容易にしかも急速に行なえるということです。
 第2にそれ以前の時期に歯を動かしても、その後顎の骨の急激な成長があると、それによって再び歯並びが乱れてしまう可能性があるということです。
 第3に12歳くらいになるとすべての永久歯がはえてくるので、矯正装置の装着などが容易になり、歯の移動がしやすくなるということです。
 特に上顎前突(いわゆる出歯)や下顎前突(いわゆる受け口)の治療は思春期の終わり頃に行うのが望ましいとされています。
 その理由は、顎の骨の成長がある程度進まないとその患者さんの生まれつき持っている素質としての上あごと下あごの位置関係が分からない場合があるからです。
 
 しかし、矯正治療の種類によっては本格的な矯正治療の準備的処置として思春期以前に行った方が良い場合もあります。
 たとえば、永久歯がはえてきた時に、とんでもない位置にはえてきた場合は、ある程度正しい位置に動かしておいた方が、後の本格的な矯正治療で歯を動かすことが容易になります。
 また、はえてきた永久歯の位置が悪く、見せかけの反対咬合を作っているような場合も、早期に歯の位置を変えたほうがいい場合もあります。
 そのほかにも上顎前突の症例のうちのあるものは、比較的早い時期に矯正治療を行った方がいい場合もあるようです。
 
 今回の学校健診で見うけられた児童の中には、何のために矯正装置をつけているのか全く理由が分からず、かえってプラック(歯垢)が付きやすくなっているだけで害があるように見える子もいました。
 
 歯科医院の中には矯正治療を希望する患者さんを逃がさないために、とにかく早く装置を付けてしまうところもあるようですから注意が必要です。
 
2024年05月16日 17:47

院長コラム No.27 歯列矯正を始めた藤井聡太八冠



将棋の藤井聡太八冠が歯列矯正をしているようです。藤井さんは少し前歯が出て、歯が重なっていましたから見た目を気にして矯正を始めたのでしょう。

小学校や中学校での歯科健診があると、その後疾病通知を持ってくるお子さんがいます。 その疾病通知に歯列・咬合・顎関節の状態という項目があります。

 日本学校歯科医会のマニュアルによりますと歯列・咬合・顎関節の状態は以下の基準で健診するよう書かれています

 ●重度の歯列異常
 ①叢生:隣接歯が互いの歯冠幅径の1/4以上の重なるもの
 ②正中離開:上顎中前歯間に6mm以上の間隙  (萌出が歯冠長の1/3以下は除く)
  ■上唇小帯の肥厚によるもの
  ●重度の不正咬合
 ③反対咬合:3歯以上の反対咬合
  ■1歯でも骨格性を疑う下顎前突
 ④上顎前突:オーバージェット8mm以上
 ⑤開咬:上下顎前歯切線間に垂直的に6mm以上
  ■過蓋咬合、交叉咬合なども記載する。
  ■歯数や程度に関係なく、現時点で精検が適当とおもわれるもの

 このような基準で健診をしたらかなり多くの児童、生徒が要精検になってしまいます。 本当にこの基準は必要なのでしょうか。
 矯正歯科のテキストブックのほとんどには歯列不正や不正咬合は有害であると書かれています。不正咬合や歯列不正は噛むことの障害、発音の障害、顔の筋肉の障害、心理的な障害、むし歯や歯周病などの原因になるということのようです。
 口蓋裂や口唇裂といった先天的な問題を持っていて、歯列不正も不正咬合もあるお子さんの場合は、たしかに発音障害や咬みにくいという問題がある場合もあります。 しかし、それは歯列不正があるからではなく口蓋裂などの問題が大きく影響しているからです。

 
 先天的な障害がない場合、不正咬合や歯列不正を矯正することは、むし歯や歯周病の予防にもあまり役に立たないようです。アメリカの歯周病学会は30年以上前に「不正咬合や歯列不正を正すことが歯周病を予防するという科学的根拠は欠如している」と発表しています。
また過去の数多くの論文から歯周組織の健康に及ぼす矯正治療の効果には信頼すべき科学的根拠はないと結論づけている研究もあります。
 むし歯への影響はどうでしょう。歯列不正特に叢生(乱杭歯・歯が重なったりしている)とむし歯に関する論文を調べた結果、そのような論文は極めて少ないことや科学的根拠の高い論文はないという報告もあります。

 特別な場合を除き、不正咬合や歯列不正に医学的医学的な意味がほとんどないことを考えると矯正治療というものは審美的な改善を目的として行うものと考えたほうがいいと思います。
 審美的な問題を本人や保護者が気にしていれば、学校健診で疾病通知をもらわなくても歯列矯正をするでしょうし、疾病通知をもらっても歯並びが気にならなければ矯正をする必要はないのです。

 
 反対咬合で有名なスポーツ選手には柔道でロサンゼルスオリンピック金メダルのJOC会長の山下泰裕氏や野球の松井秀喜氏、内川聖一氏などたくさんいます。彼らが子供のころ矯正をしていたらあれほどの選手にならなかったかもしれません。 歯列矯正は見た目が気になったら必要最小限やればいいのです。

 
2024年03月20日 10:05

院長コラム No26 歯周病は誰が治療するのか

日本歯周病学会によりますと日本人の35歳〜59歳の7割が歯周病になっているといいます。
 しかし、私の40年の臨床経験から、軽度の歯肉炎まで含めると15歳以上の日本人のほぼ全員が歯周病になっていると考えたほうがいいと思います。 いずれにしても国民の多くが歯周病になっていることは事実です。
そこで、日本歯周病学会は歯周病が重症化する前に早期に受診することを勧めています。 早期受診を勧めるのはいいのですが、歯科医院の選び方の基準に問題があります。
 日本歯周病学会では認定医、専門医制度を作っています。どんな病気でもその治療の際にはその病気に関する知識と経験が豊富な専門医に頼むことが安心につながります。歯周病も同じです。歯周病の治療は認定医か専門医に診てもらいましょうというのです。
 学会の言いたいことも分からないわけではありません。なぜなら、ほとんどの歯科医師が歯周病の治療をしていないというのが現状であり、患者さんはどこを受診していいのか困ってしまうからです。
 では、認定医や専門医はどの位いるのでしょうか。
埼玉県で調べてみますと、大学病院勤務の歯科医師を除くと認定医と専門医を合わせても約100人しかいません。 人口約740万の埼玉県でわずか100人です。 この人数で県民全員の歯周病を管理することは不可能です。  
 日本歯周病学会の専門医、指導医の理念には次のように書いてあります。「歯周病・歯周治療学の専門的知識と技術を有する歯科医師であるとともに、歯科医療関係者ならびに医療関係者と連携をとり、チーム医療を実践する」  
 このように、歯周病専門医は歯周病の治療を専門に行う歯科医師のはずです。ですからこの理念にあるように他の歯科医療関係者とチーム医療を実践するようにということなのでしょう。  歯科医療関係者というのは、他の歯科専門医や、若しくは一般的な開業歯科医師などを言っていると思います。  
つまりそれらの歯科医師と連携をとりチーム医療を実践してくださいという考えだと思います。  
 ところが現状はどうでしょうか。この理念通り歯周病専門医として歯科医療を行っている歯科医師は大学病院の歯科医師か、ごく一部の開業医だけになっています。 多くの歯周病専門医はごく普通の開業歯科医であり、むし歯の治療も入れ歯も歯列矯正も何でもやっている人達です。    
歯周病専門医と言っておきながら、ごく普通の歯科医院と変わらず、歯周病の治療が他より得意というだけの歯科医院でしかありません。  
 歯はむし歯か歯周病が原因でそれがこじれて、抜かれてしまうのです。 歯科医師が歯科の医師なら最低限むし歯と歯周病という病気を治す能力を持っているのが当たり前ではないですか。
 日本歯周病学会は日本の歯科医師のすべてが歯周病治療の能力を持つように努力することが、一番重要な仕事ではないでしょうか。そのうえで、一部の難症例を歯周病専門医に診てもらうのが理想と私は考えています。


 
 
2024年02月15日 16:36

【院長コラム】 No.25 歯周病を治療しない歯科医師たち

1月14日にホテルメトロポリタンエドモントで近代口腔科学研究会新年講演会が開催されました。
演題は「誰も知らない本当の歯周療法」で講師の飯塚哲夫先生に3時間半近く、最新の歯周療法についてご講演をいただきました。

歯周病が治らないまたは治せない本当の理由は簡単にまとめると次の4つになります。
(1) プラックコントロールに問題がある
 プラックコントロールを重要視していないため、多くの歯科医院で行われている刷掃指導は技術的なことだけを見ており歯周組織の健康状態とリンクしてません。          
(2) 非外科療法に問題がある
 手術などの外科的なことを行わずに歯周病を治すことを非外科療法と言います。 多くの歯科医師は歯石を悪者にして、患者さんにも歯石を取ることを勧めますが、 歯石は完全に除去する必要はありません。またスケーリングやルートプレイニングといった処置は治療効果に限界があることを認識しておく必要があります。
(3) 外科療法に問題がある
 進行した歯周病の場合は手術が必要な場合もあるのですが、日本歯周病学会が勧めている手術法には問題があります。本当の歯周外科は口腔外科と歯周療法の知識の両方を持っている歯科医師にしかできません。
(4) 定期検査と定期処置に問題がある
 日本歯科医師会は歯周病を予防するために定期検診を受けましょうと盛んに言っていますが、一般的に行われている検診と処置は歯石を取って形だけのブラッシング指導をしているだけです。 詳細は省きますが、定期検査と定期処置でやらなければならないことは多枝にわたり、単純なものではありません。

  講演会の後に考え込んでしまったのですが、歯科医師は歯周病を治す能力以前の問題として、治す気が本当にあるのでしょうか。歯周病の治す能力が高いとか低いとかの問題ではありません。 歯周病を治す気がほとんどの歯科医師にないというのが現実です。歯周病が治らなくてもほとんどの歯科医師はまったく困らないのです。
 当院に来院する患者さんの中には、進行した歯周病がありながら、一度も歯周病について話を聞いたことがないという患者さんは多数います。  
歯科医師が歯科の医師ではなく、歯の修理工、歯の大工、歯の美容師さんだと考えれば、歯周病を治す気のない歯科医師がほとんどだということも、納得できてしまうのです。
 特別な場合を除いて、歯を失う原因はむし歯がこじれたか歯周病が進行した場合がほとんどです。 むし歯と歯周病を完全に治せばインプラントは必要ありません。
 ラジオやテレビなどでインプラントを宣伝しているような歯科医院は病気を治していません。 当然歯周病だけでなく口の中の病気の治療など全く関心がない人達なのです。



 
 
2024年01月16日 10:23

【院長コラム】 No.24 歯科インプラントの広告宣伝を考える

先日ある会社から「インプラントシンポジウムを開催するので、インプラントについて話をしていただける歯科医師を募集しています」という内容のダイレクトメールが届きました。
 手紙によりますと「医療安全の市民対話シンポジウム」を開催するにあたり、インプラントに特化されている歯科医に連絡しているという内容でした。
 
 そうだとするとなぜ私の診療所にその手紙がきたのでしょうか、不思議です。なぜなら私はインプラントに特化するどころか私ほどインプラントに否定している歯科医師はいないからです。
 
 まったく治療方針が正反対の歯科医師の所にも手紙が来るくらいですから、全部の歯科医院に出しているのでしょう。 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるで、誰か引っかかって応募してくるだろうという戦略なのかもしれません。
 
 この手紙を送ってきた会社は歯科医療○○○株式会社という歯科医院向けの広告宣伝を手掛けている会社でした。
 最近は歯科医院を対象にした広告宣伝を扱う会社が増えてきているようです。日本インプラント株式会社とか日本歯列矯正株式会社などという会社もあります。これらの会社はインプラントや矯正の器具器材を売っている会社ではありません。インプラントや歯列矯正の宣伝が目的の会社なのです。
 
 しかし、○○人工股関節株式会社とか○○心臓移植株式会社などと言って広告宣伝をしている会社はおそらくないでしょう。 医療の広告宣伝を株式会社がやるということは考えられないことです。
 歯科でも○○歯周病株式会社とか○○○口腔外科株式会社などという広告会社は無いと思います。
 インプラントや歯列矯正、ホワイトニングは医療ではないのでこのような宣伝広告をする会社が存在するのです。
 
 歯科医増患者減と言われる時代です。歯科医師はいろいろな広告宣伝を考えています。ネット上のバナー広告はもちろん、先日は新聞に大きくインプラントの宣伝を載せていた歯科クリニックがありました。
 
ラジオで宣伝している歯科院もあります。またある歯科医院は治療が終了した患者さんに、自分の診療所の住所や名前が焼いてある煎餅をテストフードだと言って配っているそうです。 それをある新聞が地方版に取り上げていましたから、その歯科医院の先生としてはしてやったりでしょう。
 
いずれにしても、ここまで歯科医院が増えてきますと患者さんもどこに行っていいのか分からないので、広告に頼ってしまうのも無理はありません。
 
 しかし、本当に実力のある歯科医院はそのような広告宣伝は絶対しませんので注意してください。
 
2023年10月31日 16:56

【院長コラム】 No.23 医科と歯科なぜ別なのか

内科でも外科でも、そして眼科、耳鼻咽喉科、精神科の医師など全ての医師は医学部で教育を受け、卒業後に医師国家試験を受けて「医師」という資格を取得します。
 医師の資格があればあらゆる診療科の医療行為すべてを行なうことができますが、歯科医師の資格では歯科医療だけしかすることができません。
 
このように「歯科」の医師だけがそれ以外のあらゆる医師と別扱いされている理由は一体何なのでしょうか。 おそらく日本中の歯学部の教授に聞いても正確に答えられる人は皆無でしょう。
 
 詳しい説明は省きますが、現在の歯科医師のルーツは口の中の医師ではなく、Dentist(デンティスト)と言われる歯の修理をしたりや入れ歯を入れていた人たちです。
 飯塚哲夫氏は著書「歯科医師とはなにか」の「序にかえて」で「歯科医学史の知識がないということは、歯科医師たちが自らの出自や歯科医療の濫觴について無知であることであり、実はこれが歯科医療のあり方に重大な影響を与えていると」と述べています。
 
 濫觴とは《揚子江のような大河も源は觴(さかずき)を濫(うか)べるほどの細流にすぎないという「荀子」子道にみえる孔子の言葉から》物事の起こり。始まり。起源。という意味です。
 
 現在の歯科医師が歯科の医療からかけ離れた、インプラントや審美歯科やホワイトニングに夢中になればなるほど、歯科医師の社会的地位や収入は下がっていくでしょう。
 医療行為を行なう人の世の中の評価は高いようですが、歯の修理や美容を行なっている人の評価が高いはずがありません。 車の修理をやっている人や本当の美容師さんのほうがよほど難しいことをやっているかもしれません。
 
 ほとんどの歯科医師がむし歯の治療と穴に何かを詰めることを同義語のように扱っている現実があります。そのような中で医療行為としてのむし歯の治療を患者さんに理解してもらうことは大変なことです。
 また、ほとんどの患者さんが放置されている歯周病の治療に至っては、何をか言わんやです。
 
 歯科医院の数は今でも増えています。しかし、本当に歯科の医療ができる歯科医師はほとんどいないのが歯科界の現状だということを、患者さんは理解する必要があります。

 
2023年09月30日 16:05

院長コラム No22 歯のホワイトニングは医療ではない



 先日駅の近くのデパートに久しぶりに行ったところ、ホワイトニングの看板が出ていました。 新しい歯科医院でもできたのかと思ったら違いました。
 このホワイトニングというのはセルフホワイトニングと言って、歯科医師や歯科衛生士が施術するのではなく、自分で薬を塗ったり光を当てたりするようです。
 
 日本の法律では医師・歯科医師あるいは歯科衛生士以外が口の中を触れるのは違法となります。 従って医療機関以外では歯に施術することができないためセルフホワイトニングではお客さんが自分で施術するシステムとなっているが故にそのような呼び名となっているようです。
 セルフホワイトニング施術の流れは次のようです。
 1.スタッフから施術の説明を受けます
 2.歯を磨きます(電動歯ブラシを使うところもある)
 3.口の開口器を自分で装着します
 4.鏡を見ながら歯にジェルを塗ります
 5.自分でライトを当てます
 6.開口器をはずして口をすすぎます
 
 歯科医院でおこなうホワイトニングでは医薬品である高濃度過酸化水素などの漂泊剤などを使用していますが、セルフホワイトニングでは医薬品を使用できないためポリリン酸やメタリン酸または重曹など市販されているものを使用しています。
 これらは基本的に表面の汚れを取るための洗剤ですので歯科医院で行うようなホワイトニングのような漂泊効果はありません。
 セルフホワイトニングの効果は歯の表面の汚れをある程度は落とすことはできるので何となく白くなったと感じることはできるようです。
 効果が弱いのに希望する人が多いのは、料金が安いというのが理由のようです。
 
 また、最近はリップエステと言って唇専門のエステもあるようです。
 リップエステはマッサージやクリームを使った保湿などで、張りのある唇にするという施術です。
 セルフホワイトニングもリップエステも特に資格のない人が行ってもまったく問題ありません。
 その一方で歯科医師や歯科衛生士が行うホワイトニングやリップエステを売りにしている歯科医院もたくさんあります。
 そのような歯科医院の歯科医師は、資格がある歯科医療のプロが行うホワイトニングやリップエステは違うものだと言うかもしれません。
 
 しかし、私から見ればどちらも医療行為ではないことに変わりはありません。 歯科医院というのは何をするところでしょうか。病気を治すところではないですか。
 
 ホワイトニングやリップエステは病気の治療ですか。誰が考えても病気の治療ではありません。
 最近の歯科医師が行っていることは、益々医療行為から乖離する傾向があると感じているのは私だけでしょうか。
 
2023年08月10日 11:47

院長コラム No21 保険医の申請とマイナンバーカード

マイナンバーカードの健康保険証利用がいろいろと話題になっています。
今、日本ではすべての国民が公的医療保険に加入することになっており、これを国民皆保険制度といいます。
ところが、昭和31年の時点では健康保険に加入していない人が約3000万人もいました。
 
 そこで国は昭和33年に新しい「国民健康保険法(新国保法)」を成立させて、すべての市町村に公営の国民健康保険(国保)を設立させ、被用者保険に加入している会社員や公務員、その家族以外の人はすべて国保に加入することを義務づけることで、昭和36年までに、すべての国民がなんらかの健康保険に加入する「国民皆保険制度」を完成させました。
 次に健康保険の二重指定制度についてですが、この制度が出てきた背景は、医療機関が保険診療をする場合には、従来か ら保険医の指定を受けることが必要とされ、不正な診療をする保険医について、行政は保険医の指定を取り消すことができました。
ところが、不正な診療行為をする医療機関が、保険医の指定を取り消されても、別の保険医を連れてきてまた同じような診療をさせるということができてしまいます。

 そこで,厚生省は,保険診療を行う際に、保険医療機関と保険医の両方の指定 が必要であるという制度改正を行うことにより、 濃厚診療や水増し診療をする医療機関については、保険医の指定だけでなく、保険医療機関の指定取り消しを行うことにより対応しようとしたわけです。
保険医の申請は任意ですが、国民皆保険制度と保険医、保険医療機関の二重指定の制度ができたことで、医師や歯科医師は診療をする際に原則保険医でないと患者を診ることができなくなりました。
 
今考えれば医師の職業の自由や裁量権がなくなってしまう制度ですが、当時は患者だけでなく治療費を回収する手間が省けて確実に診療報酬が入ってくる医師側にも大きなメリットがあり、また、昭和40年代は診療報酬も毎年二桁アップしていたようで、この国民皆保険制度を批判する医師や歯科医師はごく一部の医師を除いていなかったようです。
ちなみに2022年の診療報酬の改定では0.29%しかアップしていません。

今、政府はマイナンバーカードと母子健康手帳、ハローワークでの求職受付、図書館カードや国立大の出欠管理まで一体化させようとしているようです。
どんどん外堀を埋めておいて、でもマイナンバーカードの申請は任意ですと素知らぬ顔をしています。
これは国民皆保険制度を作った一方で医師、歯科医師の保険医の申請は任意というシステムとよく似ています。
 
 
2023年06月30日 17:46

【院長コラム】 No.20 Cure(キュア)とCare(ケア)

 
 歯科医師会から送られてくる冊子や商業雑誌に「歯周病ケア」とか「口腔ケア」という言葉がよく見受けられます。
先日はラジオである歯科医師が歯周病は全身疾患と関係があるから、歯周病の口腔ケアが重要ですと話していました。
 このCare(ケア)といい言葉はCure(キュア)という言葉と対比して使われることが多いようです。 Cure(キュア)はCare(ケア)は本来どのような意味を持っているのでしょうか。少し調べてみました。
 長野県看護大学の江藤氏は careとcureの意味の変遷と関連を史的言語学の立場から研究しています。
 その結果,動作動詞としてのcureに対 し,状態を表す動詞であるcareについて,サービスを提供する行為や技術も重要であるが,「気持ちが向いている」という心の状態がこの語の本質的な意味であるという結論を得たとしています。
  最近、「医学が進歩し、長寿社会になった今、cureよりcareが大切になった」ということがよくいわれるようになりました。
 「care」の意味を辞書で引いてみると、動詞の項には次のように記されています。  ①気づかう、心配する、留意する、顧慮する。②(通例、否定構文で)気にする、かまう。③世話をする、めんどうをみる。④好く、愛する、望む。⑤~したがる、~したいと思う。  
  このように、ケアとは病気や障害を「治療する、癒す」(キュア)というよりは、「愛をもって気づかい、心をこめて世話をする」ということであり、本来その範囲は広いようです。
  日本語でいう看護、介護、介助、リハビリテーション、ある種の医療行為等の全てをその内容に含みます。「地域ケア」「在宅ケア」などという時の使い方がそれです。
「ある種の医療行為」とは、「リウマチケア」「ターミナルケア」「糖尿病ケア」などのごとく、慢性期や終末期の疾患で「よくはならないが、症状を緩和したり、悪くならないようにする」ための医療行為を指します。
  このようにケア(Care)という言葉には治療する、治すという意味ではなく症状を和らげたり、悪くならないようにするという意味が強いようです。
そう考えますと「歯周病のケア」といい言葉はおかしいのではないでしょうか。
 歯周病は治すことができる病気です。
 
 
2023年05月31日 18:14