院長コラム No31 予後の意味が分からない歯科医師
病院や診療所で「予後」とう言葉を聞いたことがありますか。予後とは辞書によると
1 病気・手術などの経過または終末について、医学的に予測すること。
2 病気の治癒後の経過。 と説明されています。
また、「予後とは、手術後の患者の状態や、病気・創傷の将来的な状態、特にそれらの状態に関する見込み、を意味する医学用語である」 とか「予後という言葉は疾病のその後の経過の予測として使うものである」という解説もあります。
しかし、この「予後」という言葉が間違って使われている場合があります。
例えば、「腹腔鏡手術の予後」とか「AEDを使用した場合の予後」などというのは明らかに誤った使い方です。
「腹腔鏡手術を行った○○癌の予後」、「AEDを使用した心臓震盪の予後」というのが正しい使い方です。
内科や外科ではさすがに誤った使い方をしている医師は少ないようですが、歯科では誤った使い方をしている歯科医師や論文が多数見られます。
例えば良く見られるのは「インプラントの予後」とか「レジン充填の予後」「インレーの予後」「歯周再生療法の予後」「矯正治療後の予後」など例を挙げればきりがありません。
インプラントやインレー、レジンは「物」で、「病気」ではありませんから予後という言葉は適切ではありません。また歯列矯正は一部を除き美容が目的ですから、これも予後という言葉を使うのは誤りです。
インプラントにいたっては病気を治すどころか、新しい病気を作っているのですから、「予後」という言葉が一番合わない処置なのです。
ある歯周病専門医の歯科医師は歯周病の治療について「予後の改善」とか「予後を延ばす」などをいう表現を使い論文を書いていますが、これもおかしな日本語です。
歯周病治療についても、例えば「歯周再生療法を行った重度歯周炎の予後が良好か不良か」というのが正しい表現かと思います。
なぜ歯科界には「予後」という言葉の誤った使用例が多いのでしょうか。
それは歯学部の教育のほとんどがデンティストリーと言われる歯の修理工や歯の美容を教育しており、病気の治療という概念が根本的に欠けているからだと、私は考えています。
病気が治るということはどういうことなのか、医師として当然のことが分からない歯科医師が多いようです。
歯科医師として誰でも治療できると思われている、むし歯も歯周病も本当の意味での治癒を理解している歯科医師は少ないようです。
「病気の治癒」が分からない歯科医師が「予後」という言葉を誤って使用してもおかしくはありません。
「治癒」が分からないのですから、そのような歯科医師に診てもらっても病気は治りません。
2025年03月01日 11:13