院長コラム No28 歯列矯正の時期について
校医をしている小学校の歯科健診に行ってきました。矯正治療をしている児童が何人かいましたが、中にはなぜこの時期にこのような矯正の装置が口の中に入っているのか、全く理由が分からない児童もいました。
矯正治療というのはいつ行ってもよいわけではなく、矯正治療に最も適した時期があります。
それは、顎の骨の急激な成長が見られる12~15歳くらいの時期になります。 この時期が矯正治療に適している理由はいくつかあります。
第1に顎の骨の成長期には、歯の移動が比較的容易にしかも急速に行なえるということです。
第2にそれ以前の時期に歯を動かしても、その後顎の骨の急激な成長があると、それによって再び歯並びが乱れてしまう可能性があるということです。
第3に12歳くらいになるとすべての永久歯がはえてくるので、矯正装置の装着などが容易になり、歯の移動がしやすくなるということです。
特に上顎前突(いわゆる出歯)や下顎前突(いわゆる受け口)の治療は思春期の終わり頃に行うのが望ましいとされています。
その理由は、顎の骨の成長がある程度進まないとその患者さんの生まれつき持っている素質としての上あごと下あごの位置関係が分からない場合があるからです。
しかし、矯正治療の種類によっては本格的な矯正治療の準備的処置として思春期以前に行った方が良い場合もあります。
たとえば、永久歯がはえてきた時に、とんでもない位置にはえてきた場合は、ある程度正しい位置に動かしておいた方が、後の本格的な矯正治療で歯を動かすことが容易になります。
また、はえてきた永久歯の位置が悪く、見せかけの反対咬合を作っているような場合も、早期に歯の位置を変えたほうがいい場合もあります。
そのほかにも上顎前突の症例のうちのあるものは、比較的早い時期に矯正治療を行った方がいい場合もあるようです。
今回の学校健診で見うけられた児童の中には、何のために矯正装置をつけているのか全く理由が分からず、かえってプラック(歯垢)が付きやすくなっているだけで害があるように見える子もいました。
歯科医院の中には矯正治療を希望する患者さんを逃がさないために、とにかく早く装置を付けてしまうところもあるようですから注意が必要です。
2024年05月16日 17:47