【院長コラム】 No.20 Cure(キュア)とCare(ケア)
歯科医師会から送られてくる冊子や商業雑誌に「歯周病ケア」とか「口腔ケア」という言葉がよく見受けられます。
先日はラジオである歯科医師が歯周病は全身疾患と関係があるから、歯周病の口腔ケアが重要ですと話していました。
このCare(ケア)といい言葉はCure(キュア)という言葉と対比して使われることが多いようです。 Cure(キュア)はCare(ケア)は本来どのような意味を持っているのでしょうか。少し調べてみました。
長野県看護大学の江藤氏は careとcureの意味の変遷と関連を史的言語学の立場から研究しています。
その結果,動作動詞としてのcureに対 し,状態を表す動詞であるcareについて,サービスを提供する行為や技術も重要であるが,「気持ちが向いている」という心の状態がこの語の本質的な意味であるという結論を得たとしています。
最近、「医学が進歩し、長寿社会になった今、cureよりcareが大切になった」ということがよくいわれるようになりました。
「care」の意味を辞書で引いてみると、動詞の項には次のように記されています。 ①気づかう、心配する、留意する、顧慮する。②(通例、否定構文で)気にする、かまう。③世話をする、めんどうをみる。④好く、愛する、望む。⑤~したがる、~したいと思う。
このように、ケアとは病気や障害を「治療する、癒す」(キュア)というよりは、「愛をもって気づかい、心をこめて世話をする」ということであり、本来その範囲は広いようです。
日本語でいう看護、介護、介助、リハビリテーション、ある種の医療行為等の全てをその内容に含みます。「地域ケア」「在宅ケア」などという時の使い方がそれです。
「ある種の医療行為」とは、「リウマチケア」「ターミナルケア」「糖尿病ケア」などのごとく、慢性期や終末期の疾患で「よくはならないが、症状を緩和したり、悪くならないようにする」ための医療行為を指します。
このようにケア(Care)という言葉には治療する、治すという意味ではなく症状を和らげたり、悪くならないようにするという意味が強いようです。
そう考えますと「歯周病のケア」といい言葉はおかしいのではないでしょうか。
歯周病は治すことができる病気です。
2023年05月31日 18:14