院長コラム No21 保険医の申請とマイナンバーカード
マイナンバーカードの健康保険証利用がいろいろと話題になっています。今、日本ではすべての国民が公的医療保険に加入することになっており、これを国民皆保険制度といいます。
ところが、昭和31年の時点では健康保険に加入していない人が約3000万人もいました。
そこで国は昭和33年に新しい「国民健康保険法(新国保法)」を成立させて、すべての市町村に公営の国民健康保険(国保)を設立させ、被用者保険に加入している会社員や公務員、その家族以外の人はすべて国保に加入することを義務づけることで、昭和36年までに、すべての国民がなんらかの健康保険に加入する「国民皆保険制度」を完成させました。
次に健康保険の二重指定制度についてですが、この制度が出てきた背景は、医療機関が保険診療をする場合には、従来か ら保険医の指定を受けることが必要とされ、不正な診療をする保険医について、行政は保険医の指定を取り消すことができました。
ところが、不正な診療行為をする医療機関が、保険医の指定を取り消されても、別の保険医を連れてきてまた同じような診療をさせるということができてしまいます。
そこで,厚生省は,保険診療を行う際に、保険医療機関と保険医の両方の指定 が必要であるという制度改正を行うことにより、 濃厚診療や水増し診療をする医療機関については、保険医の指定だけでなく、保険医療機関の指定取り消しを行うことにより対応しようとしたわけです。
保険医の申請は任意ですが、国民皆保険制度と保険医、保険医療機関の二重指定の制度ができたことで、医師や歯科医師は診療をする際に原則保険医でないと患者を診ることができなくなりました。
今考えれば医師の職業の自由や裁量権がなくなってしまう制度ですが、当時は患者だけでなく治療費を回収する手間が省けて確実に診療報酬が入ってくる医師側にも大きなメリットがあり、また、昭和40年代は診療報酬も毎年二桁アップしていたようで、この国民皆保険制度を批判する医師や歯科医師はごく一部の医師を除いていなかったようです。
ちなみに2022年の診療報酬の改定では0.29%しかアップしていません。
今、政府はマイナンバーカードと母子健康手帳、ハローワークでの求職受付、図書館カードや国立大の出欠管理まで一体化させようとしているようです。
どんどん外堀を埋めておいて、でもマイナンバーカードの申請は任意ですと素知らぬ顔をしています。
これは国民皆保険制度を作った一方で医師、歯科医師の保険医の申請は任意というシステムとよく似ています。
2023年06月30日 17:46