【院長コラム】 No.23 医科と歯科なぜ別なのか
内科でも外科でも、そして眼科、耳鼻咽喉科、精神科の医師など全ての医師は医学部で教育を受け、卒業後に医師国家試験を受けて「医師」という資格を取得します。医師の資格があればあらゆる診療科の医療行為すべてを行なうことができますが、歯科医師の資格では歯科医療だけしかすることができません。
このように「歯科」の医師だけがそれ以外のあらゆる医師と別扱いされている理由は一体何なのでしょうか。 おそらく日本中の歯学部の教授に聞いても正確に答えられる人は皆無でしょう。
詳しい説明は省きますが、現在の歯科医師のルーツは口の中の医師ではなく、Dentist(デンティスト)と言われる歯の修理をしたりや入れ歯を入れていた人たちです。
飯塚哲夫氏は著書「歯科医師とはなにか」の「序にかえて」で「歯科医学史の知識がないということは、歯科医師たちが自らの出自や歯科医療の濫觴について無知であることであり、実はこれが歯科医療のあり方に重大な影響を与えていると」と述べています。
濫觴とは《揚子江のような大河も源は觴(さかずき)を濫(うか)べるほどの細流にすぎないという「荀子」子道にみえる孔子の言葉から》物事の起こり。始まり。起源。という意味です。
現在の歯科医師が歯科の医療からかけ離れた、インプラントや審美歯科やホワイトニングに夢中になればなるほど、歯科医師の社会的地位や収入は下がっていくでしょう。
医療行為を行なう人の世の中の評価は高いようですが、歯の修理や美容を行なっている人の評価が高いはずがありません。 車の修理をやっている人や本当の美容師さんのほうがよほど難しいことをやっているかもしれません。
ほとんどの歯科医師がむし歯の治療と穴に何かを詰めることを同義語のように扱っている現実があります。そのような中で医療行為としてのむし歯の治療を患者さんに理解してもらうことは大変なことです。
また、ほとんどの患者さんが放置されている歯周病の治療に至っては、何をか言わんやです。
歯科医院の数は今でも増えています。しかし、本当に歯科の医療ができる歯科医師はほとんどいないのが歯科界の現状だということを、患者さんは理解する必要があります。
2023年09月30日 16:05